時をこえ、価値あるものを伝えたい
聖セシリアの教育は、カトリック精神にもとづき、「信じ 希望し 愛深く」を心の糧として、知育・徳育・体育の調和のとれた総合教育をめざします。神を識り、人を愛し、奉仕する心をもって、広く社会に貢献できる、知性をもった人間の育成こそ、聖セシリアの建学の精神です。
聖セシリア(St.Cecilia : AD230頃)
聖女セシリアはローマ初代教会の最も有名な殉教者の一人としてその名は広く親しまれています。ローマ貴族の出身で、伝説的受難記によると教皇ウルバヌス1世のもとで、夫とその弟を入信に導きました。激しい迫害当時のローマにあって、二人は共に殉教し、つづいて彼女自身もローマ市軍団長により、若い生命を断たれ殉教したと伝えられています。若く清らかな美しさで印象づけられている「聖セシリア」は、その調和のとた人柄から、音楽の聖人としても知られています。
聖セシリアの校章
盾の形はカトリックの精神をあらわしています。左下から中央にかけて上昇する三つのラインは、校訓である“信じ 希望し 愛深く”の教えをあらわしています。全体を流れる優しい曲線のなかに、毅然とした厳しさ、清潔感を擁し、聖セシリアに学ぶ生徒をイメージして、校風をデザインしたものです。
建学の精神に導かれ-「大和学園 聖セシリア」の歩み
カトリックの敬虔な信者であり、真理の道を求め続けた教育者、伊東静江によって昭和4年に設立された大和学園は、当時一般的であった良妻賢母型の女子教育の概念を大きく覆し、土に親しみ自然に触れる中で神の摂理を識ることを教育理念に掲げた革新的な学校として始まりました。翌5年には「大和学園女子高等学校」と改名。昭和7年には「大和学園小学校」、昭和10年には「大和学園幼稚園」を開設。伊東静江の教育目標である「カトリック精神による豊かな人間形成」は、初等教育から高等教育にわたる一貫した教育制度によって形作られることとなりました。
昭和20年3月、大和学園は我が国でも珍しい女子の農業専門学校「大和女子農芸専門学校」を設立。「食料増産のための専門的な農業教育」という旗印のもと、農業に対する理解を深めると共に生命の尊厳と喜びを知ることで、大和学園本来の精神である愛と奉仕の心を学び取っていくこととなりました。そして昭和22年「学校教育法」の公布により、小学校・中学校の9年が義務教育として制定されました。これに伴い大和学園は、旧来の高等女学校を移行するかたちで「大和学園中学校」を新設。翌23年には「大和学園女子高等学校」を開校。また、昭和28年には新たに「大和学園幼稚園」を開設。さらに「産業開発青年隊」の活躍によって女子の海外移住希望者が増えたことを鑑み、昭和37年には「大和女子海外拓殖学校」を設立。また、昭和38年には短大に「農芸栄養科」を、さらに昭和40年には「保育科」を新設。これが現在の「聖セシリア女子短期大学」幼児教育学科の母体となります。
こうして幼稚園から短大までを擁する学園に成長した大和学園でしたが、昭和46年に大きな転機を迎えることとなりました。創立者、伊東静江が帰天したのです。これにより新学園長に選出されたのが、亡き伊東静江の次女、伊東千鶴子でした。母にもまして熱心なカトリック信者である伊東千鶴子は、翌47年に「信じ、希望し、愛深く」を学園の校訓として掲げ、新体制の礎を築くこととなりました。
昭和54年、創立50周年を祝う式典の記念事業で画期的な出来事が行われました。校称の変更です。「聖セシリア」は音楽の守護の聖人として、古くから最も崇められてきた殉教者の一人であり、その美しい響きと清純、明快なイメージは学校の校風を象徴するものとなりました。昭和55年4月の学校創立記念日に、幼稚園から高等学校までが新たな校称に制定され、昭和58年には短期大学も改称されました。「大和学園 聖セシリア」の誕生です。以後、幼稚園新園舎の完成と小学校の新装。高等学校の新校舎建設への着工、「学習センター」の開設や「アリーナ・特別教室棟」の完成など様々な変革を経て、平成21年には創立80周年を記念することとなり、21世紀に向けて新たな幕開けを迎えることとなりました。
学校法人 大和学園
理事長 利光 康伸
聖セシリアに学ぶ生徒たちは、とても明るく素直です。学校が楽しくてしかたがないといった様子で、よく笑い、よく語り合います。しかし、いったん授業となると真剣な態度を見せ、張りつめた雰囲気をつくります。半世紀余り前、創立者は単に時代に即した学問というだけでなく、時代を超えた人間としての宗教的道徳観、価値観なしに真の教育はあり得ないという信念のもとに、カトリック精神を基盤として、この学園を創立いたしました。
今、伝統と歴史を語る松の緑は、聖セシリアの像を囲み、時代に風化されることなく、豊かな人間性を育むのにふさわしい教育環境のなかに、キリスト教の愛の教えが息づいています。この学園で十代の多感でかけがえのない時期を送る生徒たちは、生きる意味、学ぶ意義を考え、日々の学習や四季を彩る行事を通して学びます。参加協力することの大切さ、努力した結果の達成感、充実感など、さまざまな体験によって目に見えて成長していきます。そして人間らしく生きる喜び、お互いの命の尊さに気づき、他者への配慮へと広がる心の成長を得ます。それは未来につづく幸福の基盤であり、それこそが聖セシリアの中に根づいている、建学以来変わることのない教育理念です。聖セシリアは、この精神の具体化と実現を目指し、たゆまぬ努力を続けています。
聖セシリア女子
中学校・高等学校
学校長 森永 浩司
聖セシリア女子中学校・高等学校は、『幸せな人』となるための『心と力の調和』を目指して教育活動を行っています。
「 “より良く生きる” ために子供達を支える心」と、「自分のためだけではなく他者のために役立てることができる確かな学力」のバランスのとれた人格形成を目指します。
好奇心旺盛でがむしゃらに走り続ける中学時代。葛藤を乗り越えながら自分の未来に向かって突き進む高校時代。一度しかない中学時代、高校時代が実り多きものとなるよう、聖セシリアでの学習体験・生活体験を通して自ら学び、 そして仲間と切磋琢磨しながら個々の可能性を大いに伸ばしてほしいと願っています。
子供達が歩む社会は、今後ますます変化し、何が正解なのかが見えにくくなっていくことでしょう。そのような中で、自らが掲げた問題を探究することができるよう、また多様な価値観や個性を認め合いながら、自分らしく豊かな人生を送ることができるよう応援します。
聖セシリアはカトリックの女子校ですが、その母体は女子の修道会ということではありません。シスターと呼ばれる修道女の姿はどこにもありません。しかし、修道女のいない分、どのカトリック校よりもカトリックの精神、カトリックの教育理念を大切にしていますし、また修道女のいないかわりに大勢のカトリック司祭が学校にかかわっています。聖セシリアが建学の精神、教育の理念を大切に、二十一世紀の主役となる子女の育成にあたられることを心から期待しています。
カトリック横浜司教区教区長 司教 梅村 昌弘